昨日、
帝塚山大学・奈良県共済による、
自殺予防シンポジウム2008 ~自殺を止めるために私たちができること~ に出席させて頂きました。帝塚山大学学園前キャンパスにて14:00から開催されました。
帝塚山大学
心理福祉学部学部長
柴田正見 教授
帝塚山大学では、「心のケアとサポート」人材養成と自立支援(地域の活性化と安心・安全な社会の創造のための実践的教育)の取組みが平成18年度・文部科学省の現代GPに採択され、地域社会と連携した「心のケア・生活サポート教育」の研究し、地域でのリーダー育成の教育をされているお話をされました。現在のすさんだ、閉塞感のある社会環境をどうすれば良くなるのか、奈良県民にとっても我々政治家にとっても喫緊の大きな課題であります。
奈良県
健康増進課
畑中伊知雄 課長
平成10年あたりから急に増えてきた自殺者数は3万人を超え、現在に至るまで3万人を下ることはない。交通事故による死亡者数のの5~6倍にあたり、国に於いて議員立法により、平成18年 自殺対策基本法、平成19年には自殺総合対策大綱ができ、県では対策協議会が設立されたところの話をされました。
遺族の体験発表
尾角光美 さん
同志社の学生さんと自己紹介されました。まだ、お若いのに、とてもシッカリした人だと思いました。
うつ病にかかってしまわれたお母さんとの生活、光美さんを助けた「
あしなが育英会」等、胸に沁みる素晴らしいお話でした。
私にとって、特に印象に残ったお話。死にたい人にどうやって向き合うのか?「それは、相手の話を聴いてあげること。キクは聞くではなく、聴くの方で、耳と目と心で聴いてあげることだ。ただ、ただ、聴いてあげることだ。」
奈良県
健康増進課
三木洋子 主査
奈良県の自殺の現状報告をされました。
県内の自殺死亡者数と自殺死亡率はともに平成10年に急増し、その後も高い水準で推移している。一方で、全国の中では、過去10年間低いレベルで、ここ2年間は、
全国最低の数値となっている。知事は、「自殺者が少ないという良い例を分析し、良い状況を温存し守るようにしなければならない」と新聞発表をした。
[各パネリストからの報告]コーディネーターは帝塚山大学心理福祉学部
神澤創 教授
自死遺族・多重債務による
自死をなくす会代表幹事
弘中照美 さん
「お金のために死なないで」の著者でもある弘中さんからは、日々、活動されている中から、いくつかの問題点を指摘されました。私達政治家や、行政に携わるものにとって、大変参考になるご意見だと思います。
自殺対策をする上で、行政がただ担当窓口を設置し債務整理の相談体制を整えればよいということでは、不十分である。自死を考えている人の大半は、うつ状態かうつ病にかかっており、複合している要因に対して、法律家、専門医、民間
NGOとの連携が不可欠であること。
多重債務に陥っている人達にとって、弁護士・司法書士は敷居が高く、費用の心配等があるので、どの先生に相談したらよいのか分からない。法律の専門家、行政の窓口の担当者は親身に話を聞いてくれない。ひどいことを言われた。不信感、苦情が多い。
自分達は、相談者と法律専門家を紹介しながら、心の悩みに耳を傾けている。相談者と同じ目線に立って、何度も、時間をかけて、しかし理論めいたことも否定的なことも説教めいたことも、言わない。
「分らない。でも分りたい。」という姿勢が大事。そういう相談窓口が必要。
奈良弁護士会前会長
田中啓義 さん
借金が精神疾患を引き起こし、健康を損ねる。これ1つだけの原因ではないが、多重債務はおおきなポイントである。殆どの人が自分を被害者とは思わず、加害者であると思いこみ、悪いのは全て自分のせいだと思っている。これは本人だけの問題ではなく、社会の問題であり、社会構造の問題である。ワーキングプアの問題や生活保護の問題に目を向ける必要がある。
また、弘中さんの言われた弁護士の敷居は確かに高いかもしれない。最も重要なことは、弁護士の心の問題。心のこもった法律相談体制を目指す。と力強く語られました。
奈良いのちの電話協会副理事長
藤掛永良 さん
奈良いのちの電話の取組み状況について。奈良県の自殺死亡率全国最下位は、奈良いのちの電話の活動の成果であること。今後も、大綱に基づき、自殺対策を強力に推進していく。等。お話しされました。
奈良県精神保健福祉センター
高橋良斉 所長
生物学的、心理学的観点からの自殺予防について、アカデミックに説明されました。
この後、休憩があって全体討議をされたはずですが、私は誠に残念なことに次の予定があり、参加できませんでした。帝塚山大学の心理福祉学部の先生方や、パネラーの先生方にご挨拶さえ申し上げられなかったことも、心残りでした。また、いつかお会いできることを願っております。
さて、この度のシンポジウムは私にとって、大変、有意義なものとなりました。
年間3万人以上の自殺者がいることは知ってました。自殺者のニュースがマスコミで騒がれたとしても、「またか。」くらいにしか感じていなかった自分が、いかに鈍感な人間であったのか。3万人という数字は阪神淡路大震災で亡くなられた約6300人の5倍、一年に阪神淡路大震災が5回も起こったことになるわけで、このことを真剣に考えなかった自分を悔いるばかりです。
「自殺」と言う暗い影には、社会の底に蔓延している、人間の本質に関わる諸問題が凝縮されているような気がします。この問題を直視できないような、或いは、ここまで苦しみ抜いた人達に手を差し伸べられないようなことでは、政治ではありません。。
私も今後、何らかのお役に立っていきたいと、考えているところです。